スギ花粉症に対する新しい治療「舌下免疫療法」について解りやすく紹介しています。
2014年12月11日

「スギ花粉症」に対する舌下免疫療法

2014年10月からスギ花粉症(アレルギー性鼻炎)に対する新しい治療法である舌下免疫療法が始まりました。
現在、主流になっているアレルギー性鼻炎の治療は薬物療法や手術療法ですがこれらは対症療法(病気自体を治すのではなく症状を抑えるだけ)です。
これに対して免疫療法はアレルゲン(過敏症の原因となっている物質)のエキスを薄いものから段々と濃いものに増加させながら投与して体を慣れさせる、体質改善をする治療法です。そのメカニズムはまだはっきり解っていませんが過敏になっている免疫反応をコントロールする力をつけるものと考えられています。従って根治療法に近いものです。
このアレルゲン免疫療法は50年前から行われているもので決して新しい治療ではないのですが今までは皮下注射で行われていました(皮下注射法)。それが今年の10月から舌下投与(内服と似ています)でできる様になりました。これが舌下免疫療法です。
具体的な方法は、エキスを舌下(舌の裏側)にたらして2分間そのままにします。その後は飲み込んで良いのですが飲み込んだ薬液には効果はありません。これを毎日1回行います。
ただ、皮下注射法も同じですが、効果はゆっくりとしか出てきません。効果が出始めるのに3か月くらいかかります。また、免疫システムに刺激を与え続けなければいけないので一年中、スギ花粉が飛ばない時期も投与を続けなければなりません。そして十分な効果を出すためには2年以上、できれば3年以上治療を続ける必要があります。
もちろんすべてのスギ花粉症の患者さんに有効なわけではありません。効果は軽快も含めて70%くらいと考えられています。(30%の方には効かない)
では、これまでもあった皮下注射法と比べてどう違うのでしょうか?
治療効果は舌下免疫法は皮下注射法と同等かやや劣るという報告が多い様です。
治療効果に大差が無いなら何がメリットなのでしょうか?
第一のメリットは自分で簡単にできる事でしょう。
皮下注射法では週に1~2回病院で注射を受けなければいけません。初めのうちは毎週2回、その後間隔はのびますが最低でも毎月1回は病院に通って注射を受けなければなりません。これが嫌になって治療を中断してしまう方が多いのです。それが舌下免疫法では自分でできます。薬を2週間分処方してもらって(新しく出た薬は1年間は2週間分しか処方できませんから)自宅でできます。当然の事ながら注射に伴う痛みはありません。
第二のメリットはショックなどの重大な副作用が少ないことでしょう。
アレルゲン免疫療法の副作用で心配なのは全身反応と呼ばれるもので、喘息発作、消化器症状(腹痛、嘔吐)、蕁麻疹、ショックなどです。
特に怖いショックはスギ花粉エキスの舌下免疫療法ではまだ報告されていません。スギ花粉以外のエキスによる舌下免疫療法では現時点で全世界で11例(約1億回の投与で1回の計算)のショックが報告されていますが死亡例はありません。(スギ花粉症は日本を含む東アジアの一部にだけ見られるもので患者の大部分は日本で発生しているため海外ではスギ花粉の免疫療法はほとんど行われていません)
従って現時点では注意すべき副作用は喘息発作、消化器症状(腹痛、嘔吐)、蕁麻疹です。
もちろん今後スギ花粉エキスでショックが起きる可能性はあります。ですからショックに対する警戒は怠れません。
重大な副作用は初回投与時や増量期に起きやすいとされています。服用開始初期(1か月くらい)は特に要注意です。
その他のあまり怖くない副作用は舌下免疫法の方が皮下注射法よりも多いようです。
副作用の大部分は口腔内の局所症状です。
(なお、ダニによるアレルギー性鼻炎の舌下免疫療法も開発され現在、治験中です。まだ実用化されてはいません。)
治療開始の時期ですが、効果が出るのに約3か月かかることと、治療開始して2か月くらいの間は免疫的にまだ体が安定していないので、その間に花粉のシーズンが始まって大量に花粉が飛ぶと副作用を起こす可能性が高くなります。従って花粉シーズンの3か月以上前に治療を開始する必要があります。
地域や年度によってスギ花粉が飛び始める時期が違いますが長崎では通常1月下旬にはスギ花粉が飛び始め2月中にはピークになりますので逆算すると遅くとも11月中、できれば10月中には投与開始するのが良いと思われます。あるいは飛散が終了した頃に開始すべきです。今(12月)は治療開始には不適です。
しかし、スギ花粉症の患者さんがすべてこの免疫療法の対象になるわけではありません。
免疫療法には不適当な患者さんもおられます。この治療法に関心がある方は耳鼻咽喉科を受診してご相談ください。
その場合、スギ花粉のシーズンが始まる頃に受診されることをお勧めします。シーズン中の症状の程度、薬剤の効果などが免疫療法をすべきかどうかの判断に重要です。


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