年寄りイボについて
2016年3月11日

年寄りイボ

                            ニュー琴海病院皮膚科

                                廣瀬寮二

 

俗に「年寄りイボ」と呼ばれる腫瘍は、皮膚に生じる良性腫瘍の中でもっとも頻度の高いもので、高齢になるにつれ増えていきます。その正式な病名は脂漏性角化症(シロウセイカクカショウ)または老人性疣贅(ロウジンセイユウゼイ)といいます。一方、手足に生じやすいイボは尋常性疣贅(ジンジョウセイユウゼイ)というもので、こちらはウィルス性のためうつっていく別疾患です。

年寄りイボの原因のひとつは皮膚の老化ですが、むしろ日光紫外線の方がより大きな発症因子と考えられています。したがって顔面、手背などの露出部に生じやすく、屋外での仕事やスポーツを長期間行った人に生じやすいことになります。年寄りイボは高齢者に発生することより、長生きの証拠という言い方もされています。本邦では高齢化社会に伴い、年寄りイボのある人は増加の傾向にありますが、実際には多くの人が年寄りイボを持ったまま一生を終えているのです。

肉眼的な年寄りイボの症状は、簡単に言えば褐色ないし黒色の隆起する病変ということになりますが、サイズは粟粒大の小さいものからくるみ大ほどの大きなものまであり、色調もさまざまです。表面は凹凸不整でザラザラした乾燥性のものが多いものの、ときに比較的滑らかなものもあります。このように症状は千差万別なために診断はときに困難なことがあります。また高齢者の顔面には褐色の斑(色の変化のみで隆起のない状態)がしばしば発生します。これもまた紫外線が原因で生じる老人性色素斑とう病名ですが、俗にシミと呼ばれるものです。シミの一部はやがて隆起し、年寄りイボに進展することがわかっています。一旦生じた年寄りイボは生涯消失することはなく、少しずつ増大していきます。

治療については、年寄りイボは良性ですので、基本的には無処置で構いません。しかし治療の必要性はないとはいうものの、外観上の問題や、ヒゲソリ時の出血・ただれなど、ときに生活に支障をきたすことがあり、生じた部位や大きさによっては治療を希望する人もあります。治療の方法は主として手術で、腫瘍の周囲に局所麻酔を行い、メスで切除し縫合します。手術後のキズアトは線状に残ることになり、時間の経過とともに多少薄れていきますが、消失することはありません。後述するように切除された腫瘍は病理組織検査に提出することが可能で、その構造や細胞の形態から皮膚癌ではないことが確認できます。手術以外の治療法としては、良性腫瘍と診断された場合は、液体窒素冷凍凝固術で治療することもあります。-197℃の超低温の液体窒素を綿棒を用いて患部に押し当てて水疱を生じさせ、水疱ごと腫瘍を取ってしまう方法です。その場合、通常は局所麻酔は使用しないため、治療時に痛みを伴うことと、治療後に生じた患部のただれの治療をする煩わしさがあります。治療後は擦り傷と同様の瘢痕が残ることになります。この方法では病理組織検査ができないため、確実な最終診断ができないことが短所となります。

さて、もっとも気をつけなければならないことは、皮膚癌もまた年寄りイボと同様に紫外線が原因で発症し、顔面などの露出部に発生しやすく、肉眼的な症状も類似しているということです。皮膚癌の初期症状は角化という表面の乾燥を伴い、多くは紅色で、ときに褐色の斑であり、日光角化症と呼ばれる浅い病変の早期癌で始まります。やがて病変が深部へと拡大すると有棘細胞癌という進行癌となり、ついでリンパ節や肺などの内臓臓器へ転移することにより生命が脅かされることになります。つまり良性の年寄りイボと思っている腫瘍の中には皮膚癌が潜んでいることがあるのです。年寄りイボと皮膚癌の見分け方は容易ではありません。全身の皮膚、とくに顔面に今までになかったかさかさした色調変化や隆起があるのに気付いたら、早めに皮膚科を受診し、皮膚癌の可能性があるかどうかの診断を受けるのが良いと思われます。皮膚癌が少しでも疑われたら、小型の病変の場合は、そのすべてを切除し病理組織検査を行う手術が勧められます。また大型の場合は皮膚生検という検査があります。これは腫瘍の一部のみを切除し、摘出された標本の病理組織検査を行い診断を確定する方法です。その結果、良性と判明したら残る腫瘍は手術しないで構いません。勿論、診察時に皮膚癌の可能性が低いと判断された場合は、無処置で経過観察とし、増大や表面のただれなどのいわゆる悪性徴候と言われる変化が生じた時に病理組織検査を受けるのが良いでしょう。


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